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    彫刻家 松田光司のひとりごと―思いつくまま―

    彫刻の制作をしながら日々思いつくことを書きとめる。

    顔に歴史を刻む男達の肖像。

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    私の彫刻家としての制作履歴をざっと見た時、やはり圧倒的に多いのは女性像。
    そして次に多いのは子供の像であろうか。

    さてそんな中、決して数は多くないが、顔に歴史を刻んだ気骨溢れる男性肖像彫刻の存在も私の作家歴の中で外せない重要な位置を占めている。

    という事で、ここでは主に年配の方々の像を中心に紹介して行きたいと思う。



    1.「明治43年生まれの男」 2.「職人」 3.「昭和6年生まれの男」 4.「画人」 5.「創人」 6.「片岡倉吉像」 7.「嘉納治五郎像」 8.「S氏胸像」 9.「岩田次夫像」 10.「宇野弘之像」 11.「風人’06」 12.「風人’16」

    以上の12名。

    明治43年生まれの男
    1.「 明治43年生まれの男 」 h41cm 松田光司作<mitsuji matsuda works>
    1993年、私が28歳の時に制作した頭像。
    モデルは遠縁に当たるおじいさん。
    何とも言えぬ味わいのある表情に魅かれてモデルをお願いした。
    初めて作るご年配の方の像であったが、この制作により1本1本の皺よりも「皺の下にある形」の方が重要である事を知った。


    職人
    2.「 職人 」 h46cm 松田光司作<mitsuji matsuda works>(父が63歳の時にモデルをお願いして制作した頭像です。)
    今から3年前に亡くなった私の父の頭像である。
    人生というものを背中で語ってくれたのは父でした。
    アートの世界に行く事を誰よりも喜んでくれたのは父でした。
    この世界でやって行けるよう最も応援してくれたのは父でした。
    人生で最も感謝を捧げたいのは父でした。


    昭和6年生まれの男
    3.「 昭和6年生まれの男 」 h28cm 松田光司作<mitsuji matsuda works>
    1993年、私が28歳の時に制作した頭像。
    妻の父親である。
    威厳と貫禄があり、とても頼りがいのある義父であった。
    こうして彫刻として残すことが出来て本当に良かったと後からつくづく思ったものである。


    画人
    4.「 画人 」 h43cm 松田光司作
    1998年、私が33歳の時に制作した頭像。
    モデルは画家の松原賢さん。
    この時はリアルな目ってどんなだろう?・・・と思い、色々と試していた時期であった。
    結局、リアルとはそのままそっくり作る事ではないという結論に至る訳だが、この像でやってみた「目」の試みは確実に次のステップになっていったように思う。


    創人
    5.「 創人 」 h50cm 松田光司作<mitsuji matsuda works>
    会長曰く、「私は色々な偉い人が銅像になったものを見てきたが、似てないのは駄目だ!勝手に美化してもらっては困る。誰がどう見ても私だと分かるような銅像を作ってほしい!」
    依頼主の強い熱意に動かされ制作したのがこの頭像。
    この像の完成を最も喜んでくれた会長・・・あの笑顔は忘れられない。


    片岡倉吉
    6.「片岡倉吉氏胸像・顔部分」(粘土段階) 松田光司作<mitsuji matsuda works>
    2014年に制作した胸像。
    明治-昭和の時代、常陸太田市(旧太田町)において水道事業等々に尽力した公共事業家。
    制作のための写真資料こそ少なかったが、そこから明治の気概とも取れる気骨ある風貌が見えた。
    顔に歴史が刻まれている・・・そんな事を感じながらの制作であった。


    嘉納治五郎像
    7.「嘉納治五郎像・顔部分」(粘土段階) 松田光司作<mitsuji matsuda works>
    2018年に制作した銅像の顔部分である。
    設置場所はJAPAN SPORT OLYMPIC SQUARE(東京都新宿区霞ヶ丘町)。
    この像は柔道家の嘉納治五郎氏としてではなく、日本として初めてオリンピック参加を果たしたJOC初代会長としての嘉納治五郎氏の像として制作したものである。
    制作時にも書いたが、この52歳の時の氏は柔道家というより学者・研究者のような風貌風格があるように感じた。
    実際、氏は東大卒であり教育現場に深く関わっているのである。
    まさに文武両道・・・それが嘉納治五郎氏。


    S氏胸像
    8.S氏胸像 松田光司作<mitsuji matsuda works>
    今から約2年前に制作した胸像。
    立派な髭を蓄えた老紳士である。
    今も現役で仕事をされている方なのだが、説明がなければ明治維新で活躍した志士のようにも見える。
    大きな組織の長をやられている方は風貌にも風格があるものだなぁと強く思った。


    岩田次夫像
    9.「岩田次夫像」h180×66×93㎝(顔部分・粘土)松田光司作<mitsuji matsuda works>
    今年の2月に設置・お披露目した株式会社七宝の創業者・岩田次夫像の粘土段階での写真。
    故人の像ではあったが、残された写真がとても多く、制作する上においてとても助かった。
    やはり、写真は一枚でも多い方がより本人に近づく事が出来るのである。
    粘土段階の像はブロンズ像とはまた違った見え方がして面白い。


    宇野弘之像
    10.「 宇野弘之氏像・顔部分 」(h178cm) 松田光司作<mitsuji matsuda works>
    今年の3月に設置・お披露目した阿弥陀寺住職・故 宇野弘之像の粘土段階での写真。
    具象彫刻をやっている意味とは、一つには「像に魂を宿らせる」という事もあるのだが、
    別な言い方をするならば、魂に宿って頂けるような造形となるまで作り込むという事でもあるのだ。


    風人06
    11.「 風人'06 」 h58cm 松田光司作<mitsuji matsuda works>
    今回一連の流れの中、取り上げて来た男性肖像彫刻の中では若い方だが、ここに加えたのには理由がある。
    それは度々私が書いている事だが、このモデルの今中隆介氏は10年モデルとして、10年に一度肖像彫刻のモデルをお願いしているのだ。
    この時、今中は41歳・・・まだまだ刻まれた皺もほぼないが、ここから10年ごとの変化を考えるととても興味深いのである。
    ちなみに、今はまだ次の51歳の像までしか制作していないが、61歳での制作は3年後の2026年。
    本当に楽しみだ。


    風人16
    12.「 風人'16 」 h60cm #松田光司作<mitsuji matsuda works>
    「風人’06」から10年後の今中隆介氏である。
    今中が21歳の時から頭像を作っているのだが、一番変化を感じたのがこの「風人’16」であった。
    単純に年を取ったという事もあるが、やはり大学の教授となって生活もガラッと変わったという事もあるのだろう。
    さて、次回3年後の「風人’26」制作時には一体どんな変化がありどんな風貌になっているのであろうか。本当に楽しみである。


    いかがであったであろうか。
    折に触れて制作する男性像・・・美しい女性像ばかりの中で、ピリッと私の造形作品群を引き締めてくれているはずである。

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    1. 2023/05/25(木) 11:15:41|
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