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    彫刻家 松田光司のひとりごと―思いつくまま―

    彫刻の制作をしながら日々思いつくことを書きとめる。

    職人のイメージ。

    ブロック 撮影 松田光司

    さて、以前にも何度か書いているが今日は職人であった父について。('10.9.22参照)
     

    私の父は今でこそ隠居してのんびりと暮らしているが、昔は腕のいいブロック職人であった。

    それこそ現役当時はそのブロック職人としての一流の腕をかわれ、いくつもの会社からの仕事要請依頼を滅茶苦茶ハードにこなしていた訳である。

    息子の私からしてもそれはとても誇らしい事であり、まさに自慢の父であったのだ。

    実際、父によって積まれたブロック塀は見た目もかっこよくとても美しいものであったのだが、そこで何より驚くのが、そのブロックを積むスピードの速さ。

    ブロック塀というのは当然、水平垂直すべてにおいて完璧に真っ直ぐに積まないと、上に積み重ねていく過程で倒れてしまう事もある訳である。

    つまり、モルタル(セメントと砂と水を混ぜたもの)を敷いた上にブロックを置いた後、コテでたたいたりしながらかなり繊細な微調整が必要となってくるのである。

    これは当然、私も経験している事なのだが、思った以上に難しいのだ。
    まず適量のモルタルを載せる段階からそう上手くいくものではないし、当然ブロックをただ載せてもまったく正しい位置にはなってくれない訳である。

    そこで、コテで右をたたき、左をたたき水平垂直になるよう何度かそれを繰り返すのだが、・・・『よし、やっと水平になった!』と思って高さを確認すると、・・・『アーッ、全体に下がり過ぎだ!』なんて事もしばしば。


    ところが、やはり父は全く違うのだ。

    コテを使い適量のモルタルをブロックに載せるのも一瞬。

    そしてブロックをスッと置くだけで、水平垂直高さほぼ正しい位置に決まってしまうのである。
    ・・・で、ブロックをコテで3~4回たたけば微調整も瞬時に終了。

    その間ほんの数秒の出来事・・・まさに神技。


    この一連の工程を見ているだけでも面白いのだが、何より心地よいのがその一つ一つの工程から発信される音のリズム。

    コテでモルタルを軽く混ぜる音、ブロックにモルタルを載せる音、そしてブロックをコテでたたく音、・・・すべてが絶妙で意味のあるリズムを刻んで行くのである。

    私はもう20年以上、この音のリズムを聞いていないはずなのだが、いまだに心の中でその音を再現出来るくらい鮮明な記憶として残っているのである。


    さて、職人という存在を父を通してしか知らなかった私にとって、・・・
    正直、その後目にする職人は父レベルの人達ばかりではないのだと気付かされるものであった。(当然ブロック職人だけの話ではない。)

    色々な分野において何度も職人にはがっかりさせられる事があったのだが、その分、父レベルの職人に出会った時には本当にうれしくて仕方がなく、ついつい面倒がられても話しかけてしまうのであった。


    残念ながらブロック職人の世界は、日本古来の伝統の技を継承していく世界でも何でもないので、父には何の勲章も褒章もないのだが、・・・私の目に焼きつくあの技、そして心に残るあの音、・・・明らかにあるレベルを越えた特定の人しか到達できない領域のものであったと私は断言するものである。

    職人というのは、こんな存在であってほしい、・・・と勝手に思ってしまう私でした。


    お父さん、いつまでも元気でいて下さいね!
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    1. 2012/09/24(月) 18:08:53|
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    4. | コメント:2
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    コメント

    経験からいって

    職人さんがやってる仕事は、素人でも実はできるものが多いです。
    が、実際やってみると、プロの手さばきは当然のことながら尋常でなく、30分の工程を素人は半日かかってやっとこなす。しかもキレイとは限りません。
    だから、プロに仕事をお願いするわけです。
    時間掛かっても良いのは、多分趣味というのでしょうね。
    そういう意味では、自分でやっている仕事がプロといえるのか、冷静に分析してみる必要はありそうです…
    1. 2012/09/29(土) 12:36:16 |
    2. URL |
    3. こうだゆうじ #WbutWAt.
    4. [ 編集 ]

    Re: 経験からいって

    そうですね。
    今回は「職人さん」という事で話を書きましたが、
    実際、プロとしてやっているはずの仕事に「?」のつく人が実に多い事に驚かされますよね。
    正直、趣味レベルの人に仕事を頼みたいとは全く思いません。
    プロはプロらしくあってほしいと切に願うものです。
    1. 2012/10/03(水) 12:59:37 |
    2. URL |
    3. 具象彫刻家 #-
    4. [ 編集 ]

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