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    彫刻家 松田光司のひとりごと―思いつくまま―

    彫刻の制作をしながら日々思いつくことを書きとめる。

    自転車の涙?

    ペダルの軸 撮影 松田光司

    大学の頃、自転車で寮から大学まで通ったという話を以前に書いたが、それにまつわる話を少々・・・。('10.8.6参照。)


    私は東京での自転車通学を始めて、あらためて再認識した事がある。

    それは東京というのは坂の街なんだという事。

    実際、地名でも「坂」の漢字がつく地名が多いが、自転車で走ると余計にそれを実感するものであった。

    前にも書いたが、練馬から上野まで往復36km、当時は土曜日も授業があったので、1週間で216km、1か月では約936km、1年(大学は半分くらいが休み)では約5600km・・・あり得ない距離、あり得ない負担である・・・単なるママさん自転車にとって。

    ロードレーサー系でもマウンテンバイク系でもなく、変速機の機能さえもない単なるママさん自転車である。

    そんな自転車が、坂の多い東京の街を、運転の荒い20才前後の若者に乗られていたのである。

    自転車からしてみれば、いい迷惑であっただろう。

    正直、これも20数年前の話なので、この自転車が何年もったのか記憶が定かではないが、まあおよそ2年弱だったのではないか、・・・しかしその最後だけはハッキリと鮮明な映像として私の心に残っている。


    いつもと変わらない早朝、大学へ向かう途中の出来事であった。

    やはりいつものごとく、無意味に猛スピードで自転車をとばしていた訳である。

    ・・・ところが、何の前触れもなく突然、漕いでいたペダルがスカっと空回りをしたのだ。

    チェーンを通して後輪に伝わるはずの動力が伝わらない、・・・・『ん?チェーンでも外れたか?』と思ったわけであるが、・・・チェーンを見ても外れてはいない。

    『あれ?』と思い、よく確かめようと自転車を降り、チェーン近辺を見ていると、

    ・・・ポトッ・・・ポトッ・・・ポトッ・・・

    と、軸の部分から何かがゆっくり一個ずつ落ちていくではないか。

    よーく見てみると、それは美しく光る銀色のベアリングの球。

    時を刻むがごとく、最後の一つまで正確にゆっくりと落ちる球、・・・『あぁ、自転車が涙を流している!』・・・とその時の私には思えたのだ。

    2年弱の間、雨の日も風の日も、暑い夏も寒い冬もともに走った大学への道。

    これが、この自転車の最後の日となったのだ。

    2年弱で1万km以上を走破したママさん自転車、・・・それが多いのか少ないのか、基準を知らないのでよく分からないが、よく走ってくれた方ではないか。


    あの、ママさん自転車には、ただ、ただ、感謝である。


    ちなみにその後、ベアリングの球が一つ一つ落ちていく光景は、・・・ 一度も見る事はない。
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    1. 2011/05/27(金) 16:20:52|
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