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    彫刻家 松田光司のひとりごと―思いつくまま―

    彫刻の制作をしながら日々思いつくことを書きとめる。

    印象に残る光景。

    トイレットペーパーが泳いだ空 撮影 松田光司

    印象に残る光景・・・ふと、今思い出してしまったので書きとめておきたい。


    それは私が名古屋で浪人時代を過ごしていた頃の話。

    だいたい浪人生の時と言うのは、ストレスがたまっている訳である。
    何か有り余ったエネルギーを発散したくてしょうがないのだが、予備校敷地内で浪人生同志がケンカをしている姿などはよく見かけたものである。

    まあそれも印象に残ると言えば残るのだが、今日はその話ではない。

    ある晴れた日の午後、彫刻コースのアトリエの外で少し休憩をしていると、普通大学受験コースの浪人生7~8名が騒ぎながら校舎を飛び出してきて、その内の数名が外の非常階段を昇っていくでないか。

    またケンカでも始まるのか?と思って下から見ていると、一人の男がトイレットペーパーを取り出したのである。
    校舎の高さが何階建てかは忘れたが、5~6階以上はあったのであろうか、非常階段の一番上に昇ったその男が下にいる仲間に対し、
    「いいかーっいくぞー!」
    と言った次の瞬間、トイレットペーパーの端を持った状態で本体を下に落としたのである。

    トイレットペーパーの長さでも確認したかったのであろうか?その真意は分からないが、その落とされたトイレットペーパーは、そこにいる全員の想像を超えたアッと驚く動きを見せたのである。

    クルクルっと勢いよく回りながら、白い帯がどんどん長くなり、地面にそのまま落ちるのかと思った次の瞬間、サーッと突風が地面から吹き上げたのだ。

    「あっ!」と思った時にはすでにトイレットペーパー数十メートル(一般には60メートルと言われている)が空に向かい、うねりながら飛ばされていったのである。

    そして何とそのトイレットペーパーは、どこもちぎれる事なく悠然とその白い帯をうねらせながらビルの谷間をゆったりと泳いでいったのである。

    目撃していない人からすると、大げさに聞こえるかもしれないが、約60メートルのトイレットペーパーはその時まさに生き物そのものであった。
    風に舞い泳ぐその姿は優雅で気品さえ感じるほどであったのだ。

    ほんの数分の出来事ではあったが、その光景は見事に私の脳裏に焼きつき、26年経った今も忘れる事が出来ない。

    トイレットペーパーを美しいと感じたのは、あれが最初で最後であった事は言うまでもない。
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    1. 2010/12/12(日) 22:29:50|
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