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    彫刻家 松田光司のひとりごと―思いつくまま―

    彫刻の制作をしながら日々思いつくことを書きとめる。

    11~2年前に出会った学生。

    ガラス玉 撮影 松田光司

    1998年頃から去年まで御茶の水美術専門学校で、1年生対象の彫塑・石膏取りという授業を担当していた。




    6~7月頃に行う約1カ月ほどの講義であったが、結構密度の濃い授業で、学生とのコミュニケーションも充実していた。

    当然いろいろな学生と出会い、印象に残る学生もいっぱいいた訳であるが、その中でも11~2年前、かなり初期の頃出会った学生について少し語りたい。

    朝、学校への道を急いでいると、彫塑を教えている学生が私に声を掛けてきた。
    せっかくなので話をしながら学校に向かったのであるが、その時その学生が話した内容がとても印象に残るものであった。


    「先生、俺、悔しいんですよ。」

    「何が?どうしたの。」

    「俺がこんな感じの製品が欲しいなぁと思っていたやつが、ついこの前、製品化されてもう世の中に出ちゃったんですよ!」

    「製品化されて世に出るくらいの物を、それが出る前から欲しいと思っていたなんて、あなたの嗅覚やセンスがいいって事だよね、だったら良かったんじゃないの?」

    「いや、違うんですよ!俺がそれを欲しいなと思ったのはつい最近なんですけど、それをつくった人たちと言うのは、もう何年も前からそれを考え、製品化してやろうと取り組んでいたんですよね。俺なんかが思うより全然もっと前に・・・。だからやっぱりつくり手って何手も先の事が見えてなきゃ駄目って事じゃないですか!・・・俺ってまだ全然駄目。」

    「いや、そこで悔しがれるあなたはいい!いいよ、全然大丈夫だよ!まだ1年生なんだし、これからもがんばりな!」


    彼はまだ1年生であるにもかかわらず、すでに単なる受信者ではなく、明らかに発信する側の人間の意識に変わっていた。
    10数年、学生を教えてきているが、1年生の夏前からこのような高い意識を持った学生には中々会えるものではない。

    残念ながら、私は常勤ではないので、彼の名前も覚えていないし、その後どうなったのかも分からない。
    しかし、ほんの数分の会話であったが、私の記憶の中にしっかりと今でも残っている。
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    1. 2010/08/10(火) 10:17:30|
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