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    彫刻家 松田光司のひとりごと―思いつくまま―

    彫刻の制作をしながら日々思いつくことを書きとめる。

    作品「泉」にまつわる不思議な話。

    泉  松田光司作
    「 泉 」 2000年制作

    この世界も20年以上になると、いろいろと不思議な話も経験するものである。今日はその内の一つを紹介したい。ただし、怖い話ではない。



    ギャラリーシエールでの5回目の個展の時である。

    数年前に偶然知り合ったお客さんが、新しいお客さんを連れて私の展覧会を観に来て下さったのである。

    その新しいお客さんと言うのは年配の女性で、会場に入るなり、かなり熱心に作品を鑑賞されていた。

    『彫刻が好きなのかなぁ』と思いながら何気なく後ろ姿をみていると、その女性がある作品の前に立ち止まり、その場から動かなくなってしまったのである。

    その作品とは「泉」。

    この展覧会の半年ほど前に制作したもの、・・・正直私の中では何故このような形が出てきたのか不思議に感じていた作品であった。
    当時の私がつくるようなタイプの作品ではなかったのだ。


    さて、その女性が突然振り返り、私に向かいこう言った。 「これは私の手だ!」

    そしてこう続けた。
    「私は女性だし、男の人みたいに自分の銅像を残そうとは思わない。でも、この作品は私にとっての銅像です。これを私だと思ってもらえるように、みんなに残しておきたい。お金に余裕がある訳ではないけれど、この作品、ぜひ頂きたいわ。」

    まったく驚きである。特に「私の手だ!」と言われた時にはドキッとした事をはっきりと覚えている。

    実はその女性、戦時中の東京大空襲で両手に大やけどを負うという経験をされていた方なのである。

    その事実を知った時、『ああ、この作品はこの女性のためにつくった作品だったんだ!』と瞬時に理解したのであった。

    人と作品というのは、その縁にひかれるように出会うべくして出会うと言うが、まさにそれを体感した瞬間であった。
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    1. 2010/07/27(火) 10:23:15|
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